腰痛と職業は関係ない?

腰痛と職業は関係ない?

日本では腰痛のなりやすさと仕事の種類を関連づけて考える傾向がありますが、腰痛に関するさまざまな調査が行なわれているヨーロッパでは、職業と腰痛には因果関係がないことを証明する調査結果が学術誌『 European Spine Journal 』で報告されています。

この調査では、1年間にわたり自動車工場、救急隊員、事務職、病院清掃業、ビール工場という5つの職業に従事する人たち149名に、MRI検査を継続して行い、検査所見と腰痛との関連を追い続けてみました。すると調査期間中に腰痛発症が13名に見られたものの、MRI所見には変化がなかったという結果となりました。

結果から言えることは、仕事の内容と腰痛との関連性はないということと、意外ですがMRI検査が腰痛の発見にあまり役に立っていないということです。もちろんより強い裏付けを得るために更に別の職域でも調査をすることが望ましいとも考えられるのですが、選ばれた5つの仕事は、比較的腰への負担が重いであろうと考えられる職業ですから、1年間で約150人中13人しか腰痛を発症しなかったというのは、大方の予想を下回る数字と言って良いのではないでしょうか。

考えてみれば、身近で腰痛に悩まされている方を思い出してみると、みんながみんな長時間のデスクワークや腰の屈曲を繰り返すような肉体労働に従事しているわけではなく、腰への負担がそれほどかかっていないように思える人も腰痛患者は少なくありません。日本的な考え方に馴染んでいることから、こうした調査結果を前にしても、腰痛と職業との関係を100%否定する気にはなかなかなれないものですが、思っているほどの関連性はないということはあるのではないでしょうか。

欧米での腰痛に関する調査のなかには、一般的な腰痛(感染症や腫瘍などを原因としない腰痛)が脊椎の構造上の問題で引き起こされているわけではないとするものが比較的多く見られます。たとえば腰痛の原因は精神的なストレスによるものとするのは、アメリカの研究者が導きだしたものですし、ヨーロッパの腰痛のガイドラインでは、腰痛を物理的・構造的・生物学的な損傷と捉えるのではなく、生物的・心理社会的な要因で発症する痛みの症状を捉えるとしています。

健康な方の腰に腰痛患者と同じような構造上の問題が認められても、等しく腰痛の症状を発症するわけではないというのは、すでに認められていることですが、逆に考えると腰痛の原因はまだ明確に解き明かされていないということの証明でもあると考えても良いのではないでしょうか。