整形外科の歴史と慢性痛

整形外科の歴史と慢性痛

日本での運動器の慢性痛(腰痛や肩こりなど)に対する初期医療対応は、欧米と異なっているようです。

欧米では、まずかかりつけの医院(家庭医)が初期診断し、保存療法で様子を見て、必要に応じて大きな病院の整形外科、もしくは手技療法の整体、鍼灸、マッサージなどへの紹介を行っているようです。
一方、日本では、患者が自主的に動かない限りは、整形外科医が初期医療から手術までを一貫して診るようになっています。
大きな整形外科病院は、こぞって「初期治療から手術、リハビリ、社会復帰に至るまで一貫した高度な医療を提供できます」積極的に謳っています。

日本の腰痛治療はこの点で大きな問題をはらんでいます。
整形外科医は、大学で学ぶのは主として、外科手術であって、保存療法にかんしては、書籍による机上の学習が主で外科手術のプロであっても、保存療法のプロではないからです。
ところが、整形外科医を訪れる患者のほとんどは、保存療法が必要なため、保存療法のプロがスタッフとしている病院であれば初期治療から社会復帰までを謳っても良いですが、そうでない場合は問題が多いと言えます。

日本でも、欧米のように整形外科医ではなく、保存療法が専門の整形内科医や家庭医が最初に診察できるようにしていこうとする動きもあります。

更に、整形外科には、歴史的な経緯もあって別の問題も存在しています。
それは、整形外科が、歴史的に子供の骨格異常を治すことから始まっています。
つまり、視覚的に異常のある状態を元に戻す、治すということからスタートしています。
現代の整形外科の扱う範囲は、もっとも大きな病気、症状、異常を扱うようになっていますが、根本には身体の目に見える異常を元に戻すということで人体を正常に戻すという発想があります。
そのため、慢性腰痛など原因が不明の病気は対象でなかったという経緯があります。

しかも、慢性痛という概念は、整形外科で認識されたのではなく、麻酔科の医師による痛み解消の専門外来を作って、治療を行っているときに、治療しても消えない痛みがあることからこれらの痛みに対して「慢性疼痛「と名付けたということです。

整形外科医でも、同じように慢性痛に対して研究を始めていましたが、整形外科医の認識は、通常の外傷などによる痛みが傷が治っても単に何らかの理由で長引いているという考えでした。
そのため、整形外科では、全ての痛みに対して、身体や骨などの異常を探す画像検査を行うことになります。
現在の異常ばかりでなく、過去に異常が起きていなかったとその跡を探したりします。
患者に異常がなくて痛みが発生している場合は、この手法では痛みに対するアプローチの限界となります。

そこで、慢性痛の原因として考えられたのが、筋肉の使い過ぎ、動かせ過ぎ、働かせ過ぎという筋肉疲労説です。しかし、筋肉疲労がない人にも慢性痛が発生するので筋肉疲労説は慢性痛の原因ではないことが分かります。
そこで、次に、今度は「筋力低下」や「姿勢異常」という概念が現れましたが、ようやく、1990年代になって
肉体的な要因だけでは、解決できないとして、心の問題が指摘されるようになりました。

慢性痛はたくさんありますが。その中でも腰痛は、原因が見当たらない慢性痛の代表と言えます。
多くの腰痛患者がいながら、多くの整形外科医が慢性の腰痛に対して積極的に立ち向かえなかったのはこのような歴史的経緯があるためと言われています。

整形外科医は、更に悩むことに直面します。
それは、身体の異常が見られた箇所を外科手術を行って正常に戻しても痛みが消えないケースがあるからです。
これによって、整形外科は混乱することになります。

近年は、緊急性が高くない限りは、すぐに外科手術が行われることもないですが、一部の整形外科医には、専門の外科手術をしたいと思っている整形外科医はいるかもしれません。

整形外科で、本当に外科手術が必要なこともあるので、最初に整形外科で診察を受けることには意味があると思いますが、なかなか治らない腰痛には依存しすぎると病院によっては問題かもしれません。