慢性疼痛の治療法

慢性疼痛の治療法

腰痛など長引く慢性疼痛の治療は、ペインクリニック専門医らが、患者の疼痛レベルや症状に合わせて以下のようなレベルに分けて段階的に行われます。
レベル1の保存療法から始まり、侵襲的な治療法に移行していきます。

レベル1:
・安静
・運動プログラム
・痛み止めOTC薬使用
・非ステロイド抗炎症薬(NAAID)使用
・リハビリテーション実施(理学療法、作業療法、マッサージ療法、カイロプラクティック療法など)
・経皮的電気刺激療法(TENS)
・認知行動療法

レベル2:
・神経ブロック
・オピオイド投与
・神経破壊
・冷却療法
・高周波(RF)凝固療法

レベル3:
・外科手術
・神経刺激
・埋め込み型薬剤注入ポンプ
・神経遮断

これらは一般的な指針であり、患者の痛みの程度、過去の治療に対する患者の反応、担当のペインクリニック専門医の判断によって異なることがあります。
実施は、ペインクリニック専門医らが患者を十分に診断した後に、患者と主治医によって治療法が決定されます。

1)レベル1の治療法の詳細

1-1 運動プログラム
ウォーキングなどの軽い運動をおこなうことで、エンドルフィンと呼ばれる体内で生成される天然の痛み止め物質の放出を促し、疼痛の軽減を図ります。
同時に、運動によってストレスが軽減します。
また、身体の柔軟性や筋力、持久力が向上するとともに、働きが低下していた筋肉が鍛えられ、疼痛の原因となっている筋肉の代わりの役目を果たすようになります。

1-2 痛み止めOTC薬
OTC鎮痛剤(アスピリンやアセトアミノフェンなど)、OTC抗炎症薬(イブプロフェンなど)を使用し、ベッドで安静にします。

1-3 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
OTC薬で疼痛緩和が得られない場合、非ステロイド抗炎症薬を使用します。
副作用に、胃腸障害、気管支喘息(アスピリン喘息)、肝臓・腎臓障害があります。

1-4 リハビリテーション
理学療法、作業療法、マッサージ療法、カイロプラクティック療法などを利用して、身体動作の維持、身体機能の向上を目的として行われます。
痛み止め薬、抗炎症薬の服用との平行など、他の治療法と併用して行われます。

1-5 経皮的電気刺激療法(TENS)
経皮的電気刺激(TENS)療法とは、末梢神経に電気インパルスを加えると、疼痛の信号が脳に伝わることを遮断できることを利用して、疼痛部分の皮膚に細い針のような電極から電気インパルスを加える療法のことです。
また、痛み止めの効果をもつ体内物質エンドルフィンの放出が期待できるとも考えられています。

1-6 認知行動療法
慢性疼痛の痛みがひどい場合など、患者の精神的負担が大きく慢性疼痛治療を行うに当たって、十分な効果を上げるには心のケアが必要になることがあります。
個別にカウンセリングして、患者の精神状態をコントロールするために、リラクゼーション技術、イメージトレーニングなどの手法が用いられます。

2)レベル2の治療法の詳細
レベル2では、レベル1より身体の負担、費用の負担が大きくなる侵襲的な治療法が行われます。

2-1 神経ブロック
疼痛を引き起こす神経に対して、局所麻酔薬やステロイド薬を注射することで、麻痺させる疼痛を緩和させる治療法です。
また、神経ブロックを行うことで、神経を刺激して疼痛を引き起こすと考えられる神経周囲組織の腫脹が軽減され、人間の自然治癒力によって慢性疼痛が完治することも期待できます。

2-2 オピオイド投与
レベル1の治療で効果がない場合、強力な痛み止め薬であるオピオイドが処方されます。
かなりの効果が期待できますが、副作用として眠気や便秘、オピオイド依存が起こります。

2-3 神経破壊
神経破壊とは、アルコールやフェノールと言った化学物質を使用して、脊髄神経の周囲に注入し疼痛を脳に伝達する神経組織を破壊し痛みを遮断する治療法です。
神経ブロックと同じ手法です。
効果は、数週間から数ヵ月間持続すると言われています。

2-4 冷却療法
冷却療法とは、-5度から-20度のような極寒冷剤を神経にあてて、神経を損傷させ、疼痛の痛みが脳に伝わることを遮断する方法です。
寒冷剤の曝露時間の長さと強さによって、神経が受ける損傷の度合いが決まり、それによって効果は、数週間から、知覚機能の完全喪失、運動障害が生じるレベルまであります。

2-5 高周波(RF)凝固療法
高周波(RF)凝固療法とは、高周波が発するエネルギーを使用して患部周辺の神経を発熱させて、熱凝固を起こさせ、神経を伝わる疼痛信号を遮断する治療法です。
高周波(RF)エネルギーは罹患している神経のみに到達させることができるので、他の神経や罹患している神経の周囲組織を損傷させるリスクは最低限とすることができます。
この熱凝固は、1年以上にわたって疼痛の緩和の効果があり、また繰り返して行うことができる治療法です。

3)レベル3の治療法の詳細
頑固な疼痛や特定の疼痛は、レベル2でも治療法でも著しい効果が認められないことがあります。
その場合は、さらに以下のような先進的な治療法が用いられます。

3-1 外科的手術
外科手術によって、疼痛の原因を取り除きます。
また、神経に対して、外科手術を行い疼痛信号の伝達を遮断することも行われます。

3-2 神経刺激
神経刺激とは、本来の痛みの信号が脳に届く前に遮断し、別の人為的な信号(電気インパルス)によって、一種の知覚異常(パレステジア:冷たい物を熱いと感じるなどの錯覚)を引き起こして、痛みを軽減させる治療法です。

3-3 植込み型薬剤注入ポンプ
特定の疼痛に対して植込み型薬剤流入ポンプ治療法が行われます。
植込み型薬剤注入ポンプ都療法とは、脊髄周辺の髄腔と呼ばれる箇所を満たしている脳脊髄液に痛み止めを直接注入し投与します。
オピオイドなどの効果があるが、副作用もまた強力な薬の量をかなり抑制できるので、その効果、副作用を少なくすることができます。

3-4 神経遮断
外科手術の範疇に入りますが、神経遮断とは、慢性疼痛の原因である神経と周囲組織を破壊することによって、脳が疼痛を感じないようにする外科手術です。